肝臓疾患解説(2)アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

アルコール性脂肪性肝炎(NASH)とは?
 健診の肝機能障害の中で第1位に挙げられるもの、それが脂肪肝です。脂肪肝そのものは単純に中性脂肪が肝臓にたまっている状態で、いわゆるダイエットをしたり、栄養管理をしていくことによって良くなります。ところが、肝炎も伴う新しい疾患概念 NASH が登場しました。NASH というのは、Non Alcoholic Steato Hepatitis の略で、「非アルコール性脂肪性肝炎」という予後不良の一群のことです。お酒を飲まない人の中でも、組織を見ると、あたかもアルコール性の肝障害とそっくりな組織の人がいるということが分かってきたのです。

BMIが30以上の成人は要注意
 1980年、アメリカのメイヨークリニックのルーデッヒという病理学者が NASH という言葉を使い始めました。日本ではなかなか浸透しませんでしたが、NASH の中に線維化してきて肝硬変にいってしまう一群があるということが分かってきました。1990年代になると、日本のお酒の総消費量は少し減りましたが、疫学的には脂肪性肝炎は増加しています。BMI が30以上の成人で「少なくとも10人に1人が NASH と推定される」と書いてある文献もあり、頻度が非常に高いということが推測されます。

NASH の治療法は確立されていない
 食事と運動療法は、NASH に限らず脂肪肝全般の基本です。ある文献では5%痩せるということをまず提唱していますが、例えば食事時間とか食事内容など、個人個人に合わせたきめ細かい栄養指導を行う必要があります。NASH の治療法は現時点で確立されていませんが、多くの場合は、肝機能障害とともに中性脂肪、コレステロールの高値ということが多く、データを見てそれらに最適な薬剤を用いることになります。日本でも過栄養の人が増えており、予後の良くない肝疾患として注視が必要です。NASH のメカニズム解明はもちろん、さらに詳しい疫学的な研究も併せて行う必要があると思います。